renovation file 2 784 JUNCTION CAFE
築60年の趣を活かした明るく心地いい塩屋のカフェ。
ぶどう棚をくぐって玄関を入ると、キッチンを正面にして、右手に二間をつなげた広々としたカフェ、左手には窓からの光りが心地いいライブラリーがあります。カフェでは、古い日本製のオーディオから流れる静かな音楽と虫の声をBGMに、手づくりのごはんやドリンクをゆっくりと楽しめます。カフェのメニューは、地元の野菜を使った一汁三菜の定食や友人から教わったさらさらカレー、自家製の果実シロップやドリンクなど手づくりのものが中心。
長年、新生児集中治療室の看護師をされていた伊達尚美さんは、退院されたお子さんとお母さんが思い出をつくる”場所”をつくりたいとずっと考えていました。2年前にそれを実現するために具体的に動き始めました。「カフェを始めるにあたっていろいろなことを身につけようと、お菓子教室や自然農をされている方のワークショップなどに行き始めたんです。そうして出かけているうちに、塩屋のなかでいろいろな活動をしている人たちとも知り合いました。みなさんと交流をして、応援していただくうちに、こどもたちが家族と思い出をつくる場所であり、いろいろな人が行き交う“ジャンクション”的な場所をつくりたいと思うようになったんです」と、伊達さん。「塩屋には通常営業しているカフェか限られているので、いつでもふっと訪れてゆっくりしていただけるような場所になればいいなと思っています」。
最初は舞子や朝霧で物件を探し始めたのだけれど、なかなかいい物件に出会えない日が続きました。そうして数カ月たったある日、出会ったのが自分の住む町・塩屋にある築60年の一軒家です。うっそうと茂る雑草に覆われた物件の中に入ると、すてきな窓枠と屋根の形のままのキッチンの天井など、しつらえがとても魅力的なことに気づきました。けれど阪神大震災を経てかなり傾いているため、リノベーションしてカフェにできるかどうか判断ができない物件でした。
そこで自宅のリノベーションをした「DEN PLUS EGG」に連絡を取ることにしました。「お電話するとすぐに塩屋まで駆けつけてくれたんです。物件を見ると「ステキですね! 傾きを修正してリノベーションできますよ」と言っていただいたので、ここにしようと決めたんです」と伊達さん。こうして1年半に渡る大がかりな一軒家の改装が始まりました。
こちらのリノベーションは“リバイバル”と呼ばれる即興スタイルの改装方法。最初にじっくりと打ち合わせをしたら、その後はおまかせ、数カ月にわたり職人さんが住み込んで、建物と対話しながら床や壁をリノベーションしていくという、ほかに例を見ないスタイルです。一昨年の冬に始まった改装は先月最後の仕上げを迎えました。伊達さんがひと目で気に入ったフチ丸の窓枠はそのままきれいに生かされています。建て付けを直すために職人さんがその窓枠をカンナですっと削るとヒノキのいい香りが! いい素材でつくられている建具は、何年経ってもいきいきとしています。
784JUNCTIONCAFE
神戸市垂水区塩屋町9-14-7
Open 11:30-18:00 Close Monday, 2nd and 4th Sunday
https://www.facebook.com/784junctioncafe/