renovation file 5 Holt
黒とグレーの空間でオーガニック・スイーツを。
オーストラリアを旅したときに飲んだコーヒーの味が忘れられなかったあゆこさんは、いつか自分でも地元の加古川でコーヒーショップを開きたいと思いました。メルボルンにあるコーヒーショップのように、子どもからおじいちゃん、おばあちゃんまで、年代を問わず地元の人が気軽に立ち寄れるようなお店がイメージにありました。
あるとき偶然通りかかった苦楽園の『D+E MARKET(現D+E TABLE)』の扉を開けて、あゆこさんは驚きました。ヨーロッパの香りのするテーブルやキッチンなど自分が大好きな世界が目に飛び込んできたのです。この雰囲気なら、自分のイメージをきっとステキに形にしてくれると思い、お店の内装をD+E MARKET(DEN PLUS EGG)にお願いすることに決めました。旅で訪れたカフェや、雑誌や本の中で出会ったお気に入りのカフェの写真などでイメージを伝え店舗の設計が始まりました。お店の外観はグレーを基調に、入口に面したカウンターを黒と木目のシックな色調にし、キッチンにはお気に入りのフランス製のロジェールのオーブン・コンロを置きシンプルな設えにしました。そして、フロアの木目を生かしたテーブルにはパリのカフェで実際に使われていたヴィンテージのチェアを並べています。
お店で淹れるコーヒーの豆は神戸の焙煎家にお願いし、ケーキなどの食材はほぼオーガニックなものを使い手づくりし、体や心に優しいお菓子を目指しています。けれど、お店の雰囲気は、あえてナチュラルという空気を醸し出してはいません。モダンな空間の中で、食にはきちんと向き合い、ふだんオーガニックなどに関心のない方にも興味を持ってもらえたらうれしいとあゆこさんは言います。
通りを眺められる窓際の席でいただいた深煎りのエチオピアのモカ・イルガチェフェのコーヒーは、『Holt』のスペシャリテであるバスクの黒いチーズケーキとよく合います。隣の大きなテーブルでは、ご近所の親子連れがオーガニックのジンジャーエールとスコーンを食べています。1杯ずつマイペースでゆっくりとコーヒーを淹れるあゆこさんの姿を見ていると、大きく深呼吸をしてのんびりとコーヒーを味わいたくなります。